方解石 - iStone


方解石

化学式：CaCO3

透明方解石	蝶型双晶

Chihuahua, Mexico	鹿児島県串木野市串木野鉱山

犬牙状方解石

Soledade, Rio Grande do Sul, Brazil

水晶のような透明方解石（左：側面、右：上面）

中国湖南省

　方解石（ほうかいせき）は石灰岩や大理石や鍾乳石を構成している鉱物です。方解石は一定の形に割れやすい性質｛劈開（へきかい）という｝が強く、つぶれたマッチ箱のような形に割れます。また、一本の直線上に方解石を置くと、左上の写真のように直線は二重にみえます。この様な性質を複屈折といいます。いろいろな鉱物でも複屈折は発生しますが、方解石のように肉眼で確認できるほどの複屈折は希です。右上の方解石は２つの結晶が１つの結晶面を共有しいる双晶です。形が昆虫の蝶に似ていることから、蝶型双晶と呼ばれています。
　方解石が示す結晶の外形は、鉱物で最も変化に富んでおり、板状、柱状、菱面状、針状、犬牙状、釘頭状などの形態を示します。２段目の展示品は犬牙状方解石と呼ばれており、結晶の先が尖っていて、指で触ると牙のようにチクチクします。は３段目の標本は柱状の結晶です。水晶のように見えますが、上面方向から見ると、水晶ではないことが分かります。水晶の場合、６つの三角形の面が観察できます。しかし、この標本では、３つの五角形です。

オレンジ方解石	ハニーカルサイト

Mexico	Chihuahua, Mexico

グリーン方解石	ブルー方解石

Ceballos, Durango, Mexico	福岡県田川郡香春町二ノ岳

　方解石には多彩な色のものが存在します。無色透明のほかに、白、オレンジ、緑、青、ピンクなどが知られています。オレンジ色系の方解石には鉄が含まれています。ブルー方解石にはストロンチウムが含まれています。
　方解石という名前は不正確な命名です。方解石の「方」は立方体を意味し、「立方体の形に割れる石」と誤解させる名前です。方解石は斜めに割れるので、正しくは斜解石と呼ぶべきです。では、なぜ、この様になったのでしょう。元々、方解石とは硬石膏（こうせっこう）（CaSO4）という別の鉱物の呼び名でした。方解石と硬石膏は、どちらも漢方薬として使用されています。漢方薬の世界で誤解が発生したのかもしれません。ちなみに、方解石は体温を上げたいときに使用します。一方、硬石膏は解熱剤として使用されます。両者の効能は正反対。複雑かつ危険な関係です。

コラム「地球大気の調節」
地球環境にとって、方解石はたいへん重要な働きをしています。方解石は石灰岩や大理石を構成している鉱物で、海水に溶けている二酸化炭素とカルシウムから、生命活動や化学反応によって、形成されます。海水に溶けている二酸化炭素は、大気中に存在していました。方解石の形成には大気中の二酸化炭素が使用されていることになります。つまり、大気中の二酸化炭素を取り除くのに、方解石は重要な働きをしているのです。もし、地表部の石灰岩や大理石を構成している方解石がすべて分解すると、地球の気圧は現在の約９０倍になります。そして、温室効果によって、地球は金星のような灼熱地獄となってしまいます。

● 方解石（劈開品）　● 方解石（原石等）

●方解石（国産原石標本）　●方解石（外国産原石標本）