クリストバル石(方珪石)

化学式:SiO2

安山岩に付着するクリストバル石 塊状のクリストバル石

クリストバル石

クリストバル石2
鹿児島市有村町(桜島) Thomas Range, Juab Co., Utah, U.S.A.

黒曜石中のクリストバル石 蛋白石(オパール)だったクリストバル石
クリストバル石3 クリストバル石4
Cougar Butte, Siskiyou, California, U.S.A. Zhezqazghan, Kazakhstan

 クリストバル石(英名:クリストバライト)は二酸化ケイ素(SiO2)で構成されるシリカ鉱物の一種です。1887年に、メキシコのサン・クリストバル(San Cristobal)で発見されました。鉱物名は地名に因んでいます。クリストバル石は石英とは同質異像(元素組成は同じだが、結晶構造や物理的な性質が異なっている関係)の鉱物です。二酸化ケイ素は低温(870℃以下)では石英になりますが、高温(1470℃以上)ではクリストバル石ができます(870℃以上、1470℃以下では鱗珪石ができます)。
 クリストバル石は立方体の結晶を形成することがあるので、方珪石(ほうけいせき)とも呼ばれています。左上の標本を観てください。白い部分がクリストバル石です。母岩は安山岩で、大正3年(1914年)に桜島が噴火した際、流れ出した溶岩が固まって誕生しました。形成年代が歴史的に特定できる珍しい標本です。
 右上の標本は、クリストバル石の結晶が球状に集合した塊です。流紋岩の中に形成されました。クリストバル石は主に塊状で産出します。桜島の標本のように結晶が個々に成長することは希です。黒曜石の中、しばしば、クリストバル石の塊が見つかります(左下の標本を参照)。黒曜石は溶岩が地表で急冷されてガラス状になったものです。溶岩に含まれていた二酸化ケイ素は、急冷されたため、クリストバル石のままで固化しました。ゆっくりと冷えていれば、石英になっていたはずです。
 クリストバル石には高温型と低温型の2つのタイプが存在します。高温(1713℃〜1470℃)で誕生したクリストバル石を急速に冷却すると、230℃で結晶構造が変化し、別のタイプのクリストバル石へ変わります。1713℃から230℃で安定なものは高温型クリストバル石(結晶系は等軸晶系)と呼ばれています。230℃以下で安定なものは低温型クリストバル石(結晶系は正方晶系)と呼ばれています。いままで紹介してきた標本は、形成時は高温型クリストバル石でしたが、現在は低温型クリストバル石です。なお、高温(1713℃〜1470℃)で誕生したクリストバル石は、ゆっくり冷却すると、1470℃で高温型鱗珪石に変わります。
 低温型クリストバル石は海洋底の堆積物中に見出される他、蛋白石(オパール)が水分を失って石英や玉髄へ変化する過程に於いても、生成します。右下の標本は、蛋白石であったクリストバル石です。蛋白石は非結晶の鉱物ですが、水分を失っていくと、結晶構造が形成され始めます。その際、最初の段階で出現するのがクリストバル石の構造です。遊色効果を示さない蛋白石には、クリストバル石に成りつつあるものも存在します。両者を区別するには、エックス線による分析が必要です。


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