頑火輝石(エンスタタイト)

化学式:Mg2Si2O6

頑火輝石 頑火輝石(菊寿石)
Turiani, Morogoro, Tanzania 岩手県 下閉伊郡 川井村 道又

 頑火輝石(がんかせき)はマグネシウムを主成分とする斜方晶系の輝石(斜方輝石)です。マグネシウムの一部(最大で半分)は鉄と置き換わっています。色彩は灰緑色、灰色、黄褐色などです。鉄が増えると、色彩は黒色へと変わります。比重も変化し、大きく(3.21→3.58)なります。
 頑火輝石は高温に強い鉱物です。高温炉の耐火材として利用されています。約1400℃に加熱しないと、溶け始めません。つまり、頑(かたく)なに、火に対抗します。これが鉱物名の由来です。英名 Enstatite も、ギリシャ語 enstates (対抗するの意)に因んでいます。英名『エンスタタイト』も、よく使われるので、覚えておいてください。
 左上は、宝石質の頑火輝石です。この様な結晶はあまり存在しません。右上は、頑火輝石の針状結晶が放射状に集合した標本です。菊寿石(きくじゅせき)と呼ばれ、観賞石の愛好家に重宝されています。

コラム「古い分類法」
 頑火輝石が含有するマグネシウムと鉄の存在比は連続的に変化します。マグネシウムより鉄の方が多くなると、鉄珪輝石という別の鉱物で呼ばれるようになります。この名称に関する基準は、1989年に、国際鉱物学連合によって制定されました。しかし、鉱物愛好家の間では、それ以前の古い分類法も使われています。古い分類法を紹介しておきましょう。
 頑火輝石と鉄珪輝石の中間的な組成を持つものは紫蘇輝石(しそきせき)(英名はハイパーシン)と呼ばれ、頑火輝石と紫蘇輝石の中間的な組成を持つものは古銅輝石(こどうきせき)(英名はブロンザイト)と呼ばれていました。分類の基準は複数通りあり、古銅輝石を使用しない基準や、鉄珪輝石を細分化した基準も存在していました。下方に、最も一般的な基準をグラフで表しました。合わせて掲載した現在の基準と、見比べてください。現在の分類は単純化され、頑火輝石の範囲が大幅に増えています。古銅輝石、あるいは、紫蘇輝石と呼ばれていたものは、頑火輝石と呼ばれるようになりました。因みに、展示した標本は、両者とも、古い基準でも頑火輝石に分類されます。

一般的な古い基準
0 10 30 5 0 100%
頑火輝石 古銅輝石 紫蘇輝石 鉄珪輝石
Mg2Si2O6 Fe2Si2O6

現在の基準
0 5 0 100%
頑火輝石 鉄珪輝石
Mg2Si2O6 Fe2Si2O6

 古い書籍では古い名称が利用されています。古い名称が使われている標本ラベルも存在します。必要な時に、古い基準が存在したことを思い出してください。


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