磁鉄鉱

化学式:FeFe2O4

ロードストーン

磁鉄鉱

ロードストーン(天然磁石)

Oka, Quebec, Canada

Utah,U.S.A.

磁鉄鉱2
Mount Huanaquino, Potosi, Bolivia

 黒い鉱物が磁鉄鉱(じてっこう)です。正8面体の結晶を形成することが多いのですが、左側の標本には12面体のものも含まれています。磁石に引き寄せられる、珍しい鉱物です(コラム参照)。磁石に引っ付く黒いものといえば、砂鉄を思い出す方が多いと思います。実は、岩石中に含まれていた磁鉄鉱が風化で分離したものが砂鉄の正体です。今度、虫眼鏡で砂鉄を観察してみてください。正8面体の粒であることが分かります。
 鉄の釘を磁石に着けておくと、その釘自体も磁石にように鉄を引き寄せるようになります(理科の実験を思い出してください)。この様な特徴は磁鉄鉱にも備わっています。地球には磁石のような性質(地磁気)がありますが、強度と方向は一定ではありません。過去の地球の地磁気の強度や方向の変化は、岩石に含まれている磁鉄鉱を分析することによって、調べられています。
 磁鉄鉱の中には、磁石のように強力に鉄を引き寄せるものがあり、ロードストーン天然磁石)として、古くから知られています。西洋では、12世紀から航海時に方位磁針として利用されていました。三国志時代の中国でも、諸葛孔明がロードストーンを使用して、方位を測定したと言われています。ロードストーンが生成されるには強い磁力(磁石が持つ鉄を引き寄せる力)が必要です。その発生源として、落雷で地表に流れた大電流が考えられています。
(解説:電流が流れた近くでは、磁力が発生する性質があります。モーターはこの原理を利用して回転します。)

コラム「マグネットと磁石の語源」
 マグネット(磁石の英語名 magnet )の語源は、磁鉄鉱の英語名 magnetite に関わっています。磁鉄鉱の産地であったマケドニアの Magnesia から命名されたという説のほかに、発見者として伝えられている羊飼いの Magnes に由来するという説もあります。日本名の磁石は、中国の前漢時代の呼び名「慈石」(慈愛の慈を使用)に由来します。母親が赤ちゃんを引き寄せるように、磁鉄鉱(天然磁石と思われる)が鉄を引き寄せることに因んだ名称です。

磁石に引き寄せられる主な鉱物
鉱物名 化学式
自然鉄 Fe
自然ニッケル Ni
磁鉄鉱 FeFe2O4
マグヘマイト Fe2O3
ヤコブス鉱 MnFe2O4
トロイライト FeS

コラム「磁石に引き寄せられる鉱物」
 磁石に引き寄せられる主な鉱物を上の表に掲載しました。磁石と強く反応する鉱物はたいへん少なく、鉄とニッケルを主成分としている一部の鉱物だけです。鉱物鑑定の際、磁石に引き寄せられることが分かれば、鉱物種をかなりしぼることができます。また、多くの隕石には自然鉄と自然ニッケルが含まれていますが、地球の岩石にはほとんど含まれていません。よって、磁石によって、95%の隕石が鑑定可能です。
 意外なことですが、常温で磁石と強く反応する金属元素は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の3つだけです。この3元素は周期表の中央部で仲良く並んでいます。磁石と反応する原因を簡単に紹介しましょう。
 原子は中心部に存在する原子核(陽子と中性子の塊)と、その周りの電子で構成されています。電子は原子核の周りを回りながら、動いています。電子が動くとは、電気が流れることを意味します。先ほど、ロードストーンの解説にて紹介しましたが、電流が流れると磁力が発生します。つまり、電子が動くと磁力が発生します。この磁力が磁石と反応する力の原因となるはずです。しかしながら、磁力が全ての方向に働くと、互いに力を消し合い、全体の磁力が無くなってしまいます。ほとんどの鉱物や元素が磁石と反応しないのは、このためです。ところが、鉄などの場合、電子の分布状態に不規則なところ(電子が存在するべきなのに、空いているところ)が存在しているために、一部の磁力が残ってしまいます。この一部残った磁力が、磁石と反応する力の源になっています。

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