黒い鉱物が磁鉄鉱(じてっこう)です。正8面体の結晶を形成することが多いのですが、左側の標本には12面体のものも含まれています。磁石に引き寄せられる、珍しい鉱物です(コラム参照)。磁石に引っ付く黒いものといえば、砂鉄を思い出す方が多いと思います。実は、岩石中に含まれていた磁鉄鉱が風化で分離したものが砂鉄の正体です。今度、虫眼鏡で砂鉄を観察してみてください。正8面体の粒であることが分かります。
鉄の釘を磁石に着けておくと、その釘自体も磁石にように鉄を引き寄せるようになります(理科の実験を思い出してください)。この様な特徴は磁鉄鉱にも備わっています。地球には磁石のような性質(地磁気)がありますが、強度と方向は一定ではありません。過去の地球の地磁気の強度や方向の変化は、岩石に含まれている磁鉄鉱を分析することによって、調べられています。
磁鉄鉱の中には、磁石のように強力に鉄を引き寄せるものがあり、ロードストーン(天然磁石)として、古くから知られています。西洋では、12世紀から航海時に方位磁針として利用されていました。三国志時代の中国でも、諸葛孔明がロードストーンを使用して、方位を測定したと言われています。ロードストーンが生成されるには強い磁力(磁石が持つ鉄を引き寄せる力)が必要です。その発生源として、落雷で地表に流れた大電流が考えられています。
(解説:電流が流れた近くでは、磁力が発生する性質があります。モーターはこの原理を利用して回転します。) |