この標本は鉄の酸化物である。つまり、虹の石とは天然の鉄サビなのである。昔の鉱物名は褐鉄鉱(かってっこう)である。しかし、今日では、この名前は鉱物名として、使用されていない。結晶構造から、針鉄鉱(しんてっこう)と鱗鉄鉱(りんてっこう)の2つに鉱物名を分けて用いられている。この標本は、表面は鱗鉄鉱で、内部は針鉄鉱といわれている。しかし、まだ確かめられていない(堀秀道氏私信)。
虹色に輝く原因は、表面に薄い酸化膜が形成されて光の干渉が起こっているためである。つまり、水面に広がった油の膜が虹色に輝くのと同じ原理である。膜の厚さは、どちらも、1mの100万分の1程度である。
針鉄鉱の英語名はゲータイト(Goethite)という。この名はドイツの文豪ゲーテにちなんでつけられた。ゲーテは地質学にも関心を持っていて、論文も書いている。また、ゲーテはドイツの鉱物学会の会員でもあった。 |