塩化アンモン石

化学式:NH4Cl

塩化アンモン石
Schoeller 炭坑, Kladno, Czecho

 塩化アンモン石(えんかあんもんせき)は火山の噴気孔や自然発火した石炭の層など、煙が発生している場所で産出する鉱物です。煙に含まれているアンモニアと塩素が反応して形成されました。たいへん軽い(比重:約1.5)鉱物です。水に浸けると溶けてしまいます。名称は古代エジプトの太陽神アメン(ギリシャ語ではアンモン Ammon)が奉られた神殿の近くで、産出したことに由来します。英語名 Sal Ammoniac はアメン神の塩という意味です。塩化アンモン石は肥料として重宝されていました。煙から生まれる肥料(塩化アンモン石)に、人々は神の奇跡を感じていたのかもしれません。アラビア系の童話やマンガ(シンドバッドの冒険、サ・ザーン、ハクション大魔王など)には、煙と共に現れる妖精が登場します。煙と神を結びつける思想の誕生に、塩化アンモン石が関係していると、私は思います。


館長のお宝

コラム「古代エジプト太陽神アメンに因む、人名、動物名、地名」
 アメン(Amen)は古代エジプトで太陽神とされていました。古くからの太陽神ラーと習合して、アメン・ラーになりました。アメンに因む、様々な名称を紹介しましょう。
 古代エジプトでは、高貴な人物の名前に使用されていました。黄金のマスクで有名なエジプト王の名前「ツタンカーメン(Tut Ankn Amen)」は、アメンの生ける姿を意味しています。古代エジプトでは、神の姿として、動物の頭を持った人間の絵がよく描かれています。アメンの頭部は羊です。アンモナイトは、形が羊の角に似ていることから、アメンに因んで名付けられました。アンモニアの名称は、塩化アンモン石から得られたことに由来します。アミノ酸(amino acid)は、分子構造がアンモニアに似ていることに因んでいる名称です。ヨルダンの首都アンマン(Amman)もアメンと関係のある地名です。アメンを語源とする名称の多さは、エジプト文明が人類に与えた影響の大きさを物語っています。

塩化アンモン石(原石標本)


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