普通の結晶面は平らで、凹んでいません。骸晶が形成される原因は何なのでしょうか。簡単に紹介しましょう。
水晶の原料となる二酸化ケイ素(SiO2)は熱水(熱い地下水)に溶け込んでいます。まず、溶け込んでいる量が少ない(正確には
SiO2 の濃度が低くて、まだ、溶け込む量を増やせる)状態に於ける、水晶の成長を説明します。この場合、水晶の成長はゆっくりです。左上のイラストを見てください。青い部分全体が水晶の結晶を表しています。上面は平坦ではなく、不規則な段が存在していることに注意してください。どの部分が成長に適しているかを考えましょう。A点では1つの面でのみ結晶と接触します。B点では2つの面と、C点では3つの面と接触します。接触する面が多い方が強力に原料(SiO2)を吸い寄せるので、C点が最も結晶の成長に適しており、C点から成長が始まります。つまり、結晶の成長は、複雑に入り組んだ場所を埋め尽くすように進んでいきます。そのため、平坦な結晶面が最終的に出来上がります。
次に、熱水中の二酸化ケイ素が多すぎて、溶け込む限度を超えた状態(過飽和状態)を考えてみましょう。この場合、吸い寄せられる強さはあまり関係なく、どの部分でも、爆発的に結晶の成長は進みます。すると、奇妙な現象が発生します。右上のイラストを見てください。青い部分は水晶の断面です。過飽和の状態になると、赤い矢印で示した方向へ、水晶の角の部分が優先的に成長する現象が生じます。この原因は次のように考えることが出来ます。水晶の成長に二酸化ケイ素が使われると、水晶の周りの熱水に溶けている二酸化ケイ素の量は減少します。そのため、水晶から離れた地点の方が、二酸化ケイ素の量が多くなり(イラスト中の緑の円は量の分布を表しています)、水晶の中心部から離れた部分(結晶の角の部分)で急速に結晶成長が進みます。これに対し、結晶面の中央部では、二酸化ケイ素の量が減っている(角部分の成長による消費が原因)ため、過飽和状態が終わっています。そのため、成長が遅れます。その結果、角の部分が優先的に成長した結晶、つまり、骸晶が誕生します。 |