鱗珪石(トリディマイト)
化学式:
SiO
2
熊本市石神山
Thomas Range, Juab Co., Utah, U.S.A.
鱗珪石
(りんけいせき)は主に二酸化ケイ素(SiO
2
)で構成されるシリカ鉱物の一種です。通常、ケイ素の2〜3%程度がアルミニウムと入れ替わっており、ナトリウムやカルシウムが含まれています。石英とは
同質異像
(元素組成は同じだが、結晶構造や物理的な性質が異なっている関係)の鉱物です。二酸化ケイ素は低温(870℃以下)では石英になりますが、高温(870℃以上、1470℃以下)では鱗珪石ができます(参考までに、1470℃以上では
クリストバル石
ができます)。鱗珪石は火成岩の隙間で産出します。
鱗珪石は六角薄板状の結晶を形成します。色彩は透明や半透明です。光沢はガラス光沢であり、キラキラと輝いています(左上の標本を参照)。これらの特徴が魚の鱗(うろこ)に似ていることが、鉱物名の由来です。また、鱗珪石の結晶は三重の双晶(輪座三連晶)を形成します。ギリシャ語 Tridymos (三重の意)に因んで、英名は Tridymite といいます。カタカナ読みした鉱物名
トリディマイト
もよく使われるので、覚えておいてください。
鱗珪石の結晶は3 mm以下のものが多いのですが、熊本県の石神山では安山岩の隙間に1 cmにもなる大型結晶が産出します。右上の展示品は、鱗珪石の結晶が繊維状に集合してヒトデのような形になったもので、希な標本です。
最後に、鱗珪石には2つのタイプ、つまり、高温型と低温型があることを紹介しておきます。高温で誕生した鱗珪石を急速に冷却すると、870℃以下になっても石英へは変化しません。150℃以下で結晶構造が変化し、別のタイプの鱗珪石へ変わります。870℃から150℃で安定なものは
高温型鱗珪石
(結晶系は斜方晶系)と、150℃以下で安定なものは
低温型鱗珪石
(結晶系は単斜晶系)と呼ばれています。このページで紹介した標本は、形成時は高温型鱗珪石でしたが、現在は低温型鱗珪石です。低温型鱗珪石は海洋底の堆積物中に見出される他、蛋白石(オパール)が水分を失って石英や玉髄へ変化する過程に於いても、生成します。
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