ジルコン

化学式:ZrSiO4

ジルコン ジルコン2
Kunar Province, Afghanistan Balangeda, Sri Lanka

 ジルコンジルコニウム(Zr:ジルコンから発見された元素)を主要元素に持つケイ酸塩鉱物です。世界中で産出しますが、宝石となる良質な結晶は、インドやスリランカなど、限られた地域で採取されています。天然のジルコンは、黄色、黄緑色、オレンジ色などの褐色系のものが多く、ジルコンという呼び名はペルシャ語の zar(金の意)とgon (色の意)に由来します。
 ジルコンの色は熱によって変化させることが可能です。加熱処理されたものが宝石として利用されています。無色透明になったジルコンがホワイト・ジルコン、青色になったものがブルー・ジルコン、そして、黄褐色になったものがヒアシンスです。色彩は、加熱時に結晶がさらされる空気の酸素濃度でコントロールすることが出来ます。ホワイト・ジルコンはよく輝くため、ダイヤモンドのイミテーションに使用されていました。しかし、映像が二重に映る性質(複屈折)があるため、ダイヤモンドとの区別は容易です。その後、複屈折のないジルコン(キュービック・ジルコニア)が開発され、だまされた業者もいたそうです。

「ジルコンを使った2つの年代測定方法」
 ジルコン中のジルコニウムの一部はウランなどの放射性元素と入れ替わっています。ウランはα線(ヘリウム原子の中心部)を放出(α崩壊)しながら次々と別の元素へと変化し、最終的には鉛に変わります。ウランには、もうひとつ別の崩壊プロセスがあり、ウランの一部が、自然に、2つの異なる元素(ストロンチウムやルテチウムなどのグループから1つと、セシウムやネオジムなどのグループから1つ)へと、分裂(自発性核分裂)します。これらの2つの崩壊プロセスが進むペースは一定であることから、年代を求めることが可能です。ここでは、ジルコンを用いた2種類の年代測定方法を紹介します。
 ジルコンはほとんどの岩石に含まれており、ジルコンによる年代測定は利用範囲が広い手法です。まず、自発性核分裂を利用した方法を紹介します。核分裂が生じる際、誕生する2つの原子は大きなエネルギーを持って、互いに逆方向へ飛んでいきます。そのため、ジルコンの結晶には、2つの原子が飛んで行った後に、直線状の損傷が発生します。その損傷はフィッション・トラックと呼ばれ、その数を計測することによって、ジルコンの年代を求めることが出来ます(フィッション・トラック法)。なお、結晶に損傷が生じると、当然、ジルコンの硬度と密度は下がります。実際、年代が新しいジルコンの硬度は7〜7.5で、比重は4.7です。これに対し、古いジルコン(損傷が進んだジルコン)の硬度は6.5以下で、比重は4.1以下です。新しいジルコンが、宝石に利用されています。
 次に、ウランのα崩壊を利用した年代測定法を紹介します。ジルコンは風化に強い丈夫な鉱物で、ウランを高濃度で含んでいます。よって、ウランが壊変して生成した鉛の同位体を用いる年代測定に、最も適した鉱物です。1980年代、ジルコンの結晶ひとつ(ミクロン単位で可能)で年代測定が可能な分析器(SHRIMP:Sensitive High-Resolution Ion Microprobe の略。Shrimpは英語でエビを意味します。分析器の全景はエビに似ています。)が開発され、岩石の年代測定に大いに貢献しています。この分析器の最大の成果は、地球で最古の年代を示すジルコンの発見です。1986年に、西オーストラリアのジャック・ヒル地域の珪岩中を分析し、42億7600万年(誤差は600万年以内)という年代を示すジルコンが発見されました。地球の誕生が約45.5億年前です。このジルコンは地球誕生から3億年も経たないうちに生成したことになり、非常にセンセーショナルな発見でした。その後、同地域のジルコンから地球最古のものを捜す研究が進められ、2001年には44億年の年代を示すジルコンが発見されています。この最古のジルコンを構成する酸素原子を分析したところ、水と反応して生成したと解釈されるという興味深い結果が出ています。44億年前の地球に、海が存在していたことを示す証拠になるかもしれません。

ジルコン (ジュエリー) ●ジルコン

ジルコン (裸石) ●ジルコン(原石標本) ● ジルコン (原石等)


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