ホー・テミキ隕石

オーブライト
ホー・テミキ隕石
Khor Temiki, Gash Delta, Kassala, Sudan

1932年落下、価格(1グラム):¥10000

 1932年4月8日に、スーダンのホー・テミキに落下した。回収量は約5Kgである。オーブライトと呼ばれているエコンドライトの一種である。
 オーブライトは、ほとんど MgSiO3 組成の輝石(エンスタタイト)だけで構成されいる。エンスタタイトの結晶の間を細粒化したエンスタタイトが埋め尽くした構造(この様な構造をした岩石をモノミクト角れき岩という)をしている。そして、エンスタタイトの結晶には強い衝撃の痕跡がある。
 普通の岩石中の輝石には鉄が酸素と結びついてFeSiO3の形で含まれているが、オーブライト中では鉄は酸素と結びつけないでいる(この様な状態を還元的という)。オーブライトには、オルダハマイト(CaS)、閃マンガン鉱(MnS)、オスボルナイト(TiN)といった強い還元的な環境でのみ形成される特異な鉱物が含まれている。オルダハマイトとオスボルナイトは地球でも発見されていない鉱物である。
 この様な鉱物構成や化学組成、そして、酸素の同位体組成の類似は、オーブライトはコンドライトの一種であるEコンドライトエンスタタイトコンドライト)と密接な関係があることを示している。このことより、Eコンドライトからなる天体で起こった火成活動の集積岩としてオーブライトは形成されたと考えられる。つまり、オーブライトは、その天体のマントルの欠片というわけだ。また、微量元素の研究より、鉄隕石のグループ(AB)が、その天体のコアと考えられている。ただし、Eコンドライトを溶かすことによって、オーブライトに含まれる特異な鉱物をすべて生成することに、まだ、成功していないことを付け加えておく。
 オーブライトとEコンドライトの生成環境や鉱物構成は、地球とは大きく異なっている。しかし、酸素の同位体組成の分析結果は、オーブライトとEコンドライトを構成する酸素は、地球と月を構成する酸素と同じ供給源をもつことを示唆している。この様な酸素の同位体組成の特徴は他の隕石には観られない。火星隕石の酸素の同位体組成の特徴も地球のものとは異なっている。原料物質の比較では火星よりも地球に類似した惑星で、オーブライトは形成されたのかもしれない。また、なにが原因で異なった進化をしたのかという疑問もある。このように、地球の起源と太陽系の起源の関係を知るうえで、オーブライトとEコンドライトは興味深い隕石と言える。

コラム「反射光スペクトル」
 写真のようにオーブライトは、白い部分が多い。白いということは、すべての可視光を反射していることを意味している。同じ色(光の反射)をした天体(小惑星)が存在すれば、その天体から隕石が飛んできたのではないかと、考えることが出来る。この様な期待を持って、小惑星と隕石の反射光スペクトルが測定された。その結果、多くの小惑星の反射光スペクトルが、隕石のものとよく似ていることが判明した。その結果を少し紹介する。
 まず、オーブライトは、第44番小惑星ナイサと、よく一致した。小惑星帯の外側の部分の小惑星の多くは、炭素質コンドライトと、よく一致した。地球に近づいてくるアポロ小惑星群は、普通コンドライトに似ていた。第4番小惑星ベスタは、エイコンドライトの一種であるユークライトに似ていた。鉄隕石、石鉄隕石、エンスタタイト・コンドライトに似た小惑星は、小惑星帯の内側に存在するようだ。

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