1998年の国際化石鉱物ショー(池袋で開催)で最も注目された展示品が、最大の月隕石(重さは1425g)であった。この標本は、その月隕石の一部である。月隕石とは月から飛んできた隕石である。つまり、この標本は月の石なのである。1998年3月10日、リビアのハムラー砂漠(アルジェリアとの国境に広がる砂漠で、サハラ砂漠の一部)で、この月隕石は発見された。隕石の表面の一部分は茶色い表面溶融(大気中を落下中に焦げた部分)で覆われていた。月の岩石はアポロ計画とルナ計画によって月面で採取されているため、比較することによって、この隕石は月起源であると結論づけることが出来る。
写真を観察すると、白色や灰色の角張った岩石の破片が含まれている構造をしている。破片の多くは斜長岩であるが、花崗岩に似た岩石やインパクトメルト(衝突で形成されたマグマが固まったもの)やガラス玉も含まれている。この様に複数の種類の岩石の角張った欠片が集まって形成されている岩石をポリミクト角礫岩(かくれきがん)という。この様な特徴を、月の高地(白く見える地域)で採集された岩石の多くが持っている。また、両者の化学組成もよく似ている。これらの根拠より、この隕石は月の岩石であったと判断される。 |