黒辰砂(くろしんしゃ)は辰砂と同質異像(化学組成が同じだが、結晶構造が異なる)の関係にある鉱物です。黒辰砂は辰砂に伴うことが多く、この標本でも、共存(黒色部が黒辰砂、赤色部が辰砂)していることがよく分かります。英語名
metacinnabar もギリシャ語の meta (共存するの意)を接頭語として利用した命名です。黒辰砂は辰砂を344℃に加熱すると生成します。温度が下がると辰砂に戻るのですが、この標本の場合、戻っていません。別の条件(亜鉛やセレンの混入)が原因となって、戻る反応が邪魔されていると考えられています。 |