真珠(パール)

化学式:CaCO3 + タンパク質

真珠 黒真珠
真珠(パール) 黒真珠
アコヤガイ クロチョウガイ

 真珠(しんじゅ)は貝が造り出した宝石です。多くの宝石が研磨加工を必要としますが、真珠は貝から取り出した段階で、すでに宝石としての美しさを持っています。そのため、古くから人類に愛好されていました。ホメロス(古代ギリシャの伝説的な詩人)の詩にも真珠が登場します。クレオパトラはブドウ酒に真珠を入れて飲んでいました。魏志倭人伝には、魏の王が卑弥呼に真珠を贈ったと記載されています。我が国では、山で取れる美しい石を玉と呼び、海で取るものを珠と呼んでいました。真珠という日本名はこれに因んだものです。また、英語名のパール(Pearl)は、ラテン語のペルナ(ムラサキガイの一種)に由来しています。真珠は6月の誕生石の1つです。
 真珠は、貝の自己防衛本能によって誕生する宝石です。天然の真珠の中心部には、砂粒や別の生物(小さい虫や魚など)が異物として入っています。異物の周りに殻を形成して身を守る本能が貝には備わっており、その殻が真珠の本体となります。このような自己防衛システムを持つ貝は、1000種類以上生息するそうですが、宝石となる良質の真珠を造り出す貝は多くありません。アコヤガイ、クロチョウガイ、シロチョウガイ、マベガイなどの海の貝と、イケチョウガイ、イガイ、ドグガイなどの淡水の貝から、宝石としての真珠を得ることができます。
 真珠の本体は、霰石(あられいし)(CaCO3)という鉱物と、コンキオリンと呼ばれるタンパク質の一種で構成されています。真珠の内部構造はレンガの壁に似ています。つまり、霰石の結晶がレンガであり、コンキオリンがレンガのすき間を埋めるセメントの役割を果たしています。美しい光沢を持つ真珠の場合、霰石の結晶の大きさが揃っていて、霰石の結晶の層が規則正しく(層の厚さが一様)形成されています。この層の厚さがそろっているため、光の干渉現象が発生し、素晴らしい光沢が生じます。層の厚さが、0.2〜0.4 ミクロン(1ミクロン = 0.001 ミリ)だと、ピンク色の真珠になります。これより少し厚いと、銀白色の真珠となります。その他の色彩真珠の場合、コンキオリンの自身の色か、コンキオリンに混ざっている不純物の色が、発色の原因となっています。

コラム「真珠の養殖」
 天然の真珠は、貝が偶然、砂などを取り込むことによって誕生したもので、希少性の高いものです。そのため、真珠の養殖方法が開発される前、真珠は高価な宝石でした。ローマのジュリアス・シーザーは、一粒の真珠を¥4,000万(現在の貨幣価値に換算)で入手したと伝えられています。世界で最初に真珠を養殖するようになったのは、中国人です。13世紀頃から、鉛で造った小さい仏像を貝の中に入れ、仏像真珠と呼ばれる神具が造られています。西洋では、1761年、スウェーデンの生物学者リンネが、真珠の養殖に成功したそうですが、その方法は公開されていません。本格的な真珠の養殖方法を開発した日本人です。我が国では、アコヤガイに天然の真珠が多く存在することが知られていたので、アコヤガイに注目して、研究が進められました。1893年、核となる物質を貝の体内へ入れ込むことによって、御木本幸吉が養殖の真珠を造り出すことに成功しました。しかし、その時は、半球型の真珠でした。それから、12年後、核と一緒に、貝の外部の細胞の一部を入れ込むことによって、球形の真珠を養殖する方法が、見瀬辰平と西川籐吉によって発見されました。この発見を切っ掛けに、我が国の養殖真珠産業は発展し、日本は代表的な真珠の生産国になりました。

パール ●パール
真珠 ● あやこ本真珠  ● タヒチ黒真珠


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