自然銀は銀を主成分とする元素鉱物です。自然銀を放置していると黒く変色してしまいます。原因は大気中のイオウ化合物(SO2,H2S)です。火山ガスにはイオウ化合物が含まれており、火山の多い日本は銀の保存に不適な国です。また、自動車の排気ガスにもイオウ化合物が含まれており、日本の都市部は銀にとって最悪の地でしょう。この例から分かるように、銀はイオウと化合しやすい金属で、多くの場合、硫化鉱物(輝銀鉱:Ag2S)として存在します。
左上の標本は銀の結晶が樹木の枝のように成長したもので、樹状銀と呼ばれています。黒い部分は、ヒ素(As)で構成された自然砒です。ヒ素はネズミの駆除剤にも利用される猛毒です。この標本は20年以上銀の輝きを保っていますが、ヒ素がイオウと銀の反応を阻止してくれていると思われます。毒を盛って毒を制しているというわけです。右上の標本は、銀の結晶が針金状に長く伸びて、カール状に曲がっているものです。ヒゲ銀と呼ばれています。下側の標本は、斑銅鉱に含まれている糸状の自然銀です。 |