テクタイトは黒曜石に似たガラスです。外形はレンズやボタン、あるいは、しずくのような形状が多く、固まる前に大気中を飛んでいたと思われます。また、採取される場所との地質学的な関係がなく、空からばらまかれたような状態で発見されます。よって、隕石の一種という説がありますが、分散している範囲が隕石に比べて広大であり、ストロンチウムや鉛の同位体比の分析値から地球物質との差は認められません。テクタイトは、巨大隕石の衝突によって蒸発気化した地表の石や砂などが、上空で急冷して固まったガラスであると考えられています。名前はギリシャ語のtektos(融解したの意)に因んでいます。
テクタイトの色は産地によって特徴があります。左上の黒褐色のテクタイトは中国の海南島で採れる海南島テクタイトです。右上の緑色の標本はチェコのボヘミア地方で採れるテクタイトで、モルダバイトと呼ばれています。ドイツのリース・クレーター(直径24km。クレーターの中にネルトリンゲンという町がある。)が誕生したとき(1500万年前)に、モルダバイトは形成されました。チェコではモルダバイトを研磨したものが売られています。左下のレモン色の標本はエジプトの砂漠で採れるテクタイトで、リビアン・ガラスと呼ばれています。テクタイトには産地名に由来した名前が付いている場合が多く、他には、オーストラライト、インドシナイト、マレーシアナイトなどが知られています。
右下の標本は恐竜が絶滅した6500万年前に形成され地層(K−T境界層)の一部で、顕微鏡サイズのテクタイト(マイクロテクタイト)が含まれています。この地層には、隕石に多く含まれる(地表にはほとんど存在しない)イリジウムという元素が高濃度で含まれており、巨大隕石の地球衝突による恐竜絶滅説の証拠とされています。隕石衝突時に形成されたクレーターは、メキシコのユカタン半島の先端の海底に確認されており、チクチュルブ・クレーター(直径が90Km以上)と命名されました。 |