1962年10月3日、ナイジェリアのザガミに落下した。回収量は約18kg。隕石の分類名はシャーゴッタイト(正確に言うと玄武岩質シャーゴッタイト)である。コンドリュールを含んでいない石質隕石であるエコンドライトの一種で、主に輝石と斜長石で構成されている。斜長石はガラスに変質しており、隕石が強い衝撃を受けたことを示している。写真中で白い部分がガラス化した斜長石である。
多くの隕石が形成されたのは約45.5億年前であるが、ザガミ隕石の分析から得られた年代はSr(ストロンチウム)を用いた年代法では約1.8億年であった。この異常に若い年代は、火成活動が起こっていた大きな天体でザガミ隕石が形成されたことを意味している。その天体とは。答えはガラスに変質した斜長石に含まれていた。ガラス中の気体に存在する希ガスを分析したところ、火星の大気に存在する成分が含まれていることが判明した。つまり、ザガミ隕石は火星で形成された岩の一部と考えられるのである。なお、火星の大気はヴァイキング号によって直接火星で分析されている。また、隕石が受けた激しい衝撃の原因として、別の隕石の火星への落下による衝突が提案されている。
ザガミ隕石を含めて、シャーゴッタイトの年代の解釈は複雑である。他のシャーゴッタイトの年代も、Sr(ストロンチウム)を用いた年代法では約1.8億年であった。しかし、Nd(ネオジム)を用いた年代法では約13億年であった。ふたつの異なる年代の解釈として、約13億年前にシャーゴッタイトとなる岩石が火星でのマグマ活動によって形成され、約1.8億年前に激しい衝撃を受けたと解釈する説がある。この説を支持する理由として、他の種類の火星隕石(ナクライトとシャシナイト)からは約13億年という分析結果がある。約13億年前に大規模な火山活動が火星上で起こっており、大量の岩石が形成されたと考えられる。その際、シャーゴッタイトになる岩石も形成された可能性は高い。
話をまとめると、以下のようになる。まず、約13億年前の火星での火山活動で、後にザガミ隕石となる岩石が形成された。約1.8億年前、その岩石の近くに別の隕石が落下し、ザガミ隕石となる岩石を火星の外へ、はじき飛ばした。その際、岩石を構成していた斜長石がガラス化し、その中に火星の大気を保持した。宇宙空間をさまよっていた岩石は地球の引力に捕らえられて、1962年にナイジェリアのザガミに落下した。これがザガミ隕石の歴史である。 |