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猫目効果(シャトヤンシー)

キャッツアイの猫目効果 シャトヤンシーを示すクオーツ・キャッツアイ タイガーアイのキャッツアイ効果
キャッツアイ クオーツ・キャッツアイ タイガーアイ

 猫目効果キャッツアイ効果)とは、宝石内部で反射された光が宝石の外部に集まって、線条(白い光の帯)が出現する効果です。まず、上方の展示品を見てください。いずれも、中央の山高部に上下方向の白い線が見えています。これが線条です。正面から覗くと、線条は中央部に位置していますが、宝石を少し動かして角度を少し変えると、線条の位地は予想以上に大きく動きます(現物を手にして確かめてください)。その原因は、宝石の表面から浮き出た場所に線条が存在しているからです。線条の想定外の動きは、まるで、猫の目を見ている様な錯覚を起こします。これが効果名の由来です。フランス語で猫は Chat (シャと発音)といいます。よって、猫目効果はシャトヤンシー(Chatoyancy)とも呼ばれています。
 猫目効果を示す宝石の内部には、密集して存在する平行状の液体チューブ・インクルージョン、あるいは、平行繊維状組織が存在しています。それらによって引き起こされる光の内部反射が線条の元となります。そして、宝石を適切にカボション・カット(むっけり形にカット)すると、宝石の結晶がレンズのような働きをして、線条が出現します(詳細はコラムを参照)。キャッツアイの場合、目のような細長い形状にカボションカットされることが多いのですが、線条を長くて強くするのが目的です。
 猫目効果を示す代表的な宝石はキャッツアイです。キャッツアイとは、本来、猫目効果を表す言葉ですが、宝石名としても使用されています。キャッツアイとは、クリソベリルと呼ばれる鉱物のうち、平行状の液体チューブ・インクルージョン(主成分は水)を含んでいて、猫目効果を示すものです。正式には、クリソベリル・キャッツアイと呼ぶべきですが、多くの場合、単にキャッツアイと呼ばれています。キャッツアイとなるクリソベリルの原石を下方に展示しました。斜めの平行線がチューブ・インクルージョンです。赤い破線のような向きで宝石をカットすると、イラストのような猫目効果が現れます。
 クリソベリル以外にも平行状の液体チューブ・インクルージョンを含有する宝石は存在します。ここで展示したクオーツの他、トルマリン、アパタイト、アクアマリンなどにも含まれているものが存在し、猫目効果を示します。それぞれの名称は、宝石名を前に付けて、クオーツ・キャッツアイとか、トルマリン・キャッツアイなどと、呼ばれています。
 タイガーアイも猫目効果を示しめすことで有名です。内部には、液体チューブ・インクルージョンではなく、角閃石の石綿(青石綿)が平行繊維状で含まれています。脱色処理したタイガーアイ(安価)は、本家(高価なクリソベリル)のキャッツアイと大変よく似ているので、注意してください。

猫目効果を示すクリソベリル
キャッツアイ(猫目効果を示すクリソベリル)の原石

コラム「猫目効果の出現原理」
 上の写真のような向きで取り出されたキャッツアイの原石が、カボションカットされることによって、猫目効果を示す原理を紹介しましょう。カットされたキャッツアイの断面図は下の3つのイラストで表すことが出来ます。水色の部分が、液体のチューブ・インクルージョンです。

キャッツアイの断面図
横方向からの切断面
上方向からの切断面 縦方向からの切断面

 まず、キャッツアイの結晶とインクルージョンの方向関係を理解してください。長い方の側面から見ると、チューブ・インクルージョンが串刺しになっています。結晶の内部に入った光は液体のチューブ・インクルージョンによって反射され、結晶の外部に出て来ます。そして、外部へ出た光の一部が集まって、線条が形成されます。この様子を理解するために、虫眼鏡を思い出してください。左下の図は虫眼鏡のレンズによって入射光が焦点を結ぶ様子を表しています。仮定の話ですが、レンズの中央部(赤い破線の部分)に鏡があるとします。すると、レンズに入射した光は鏡で反射され、反射光となります。反射光はレンズから出た後に焦点(赤い方)を結びます。このことを納得するために、左下のイラストを赤い破線で折り返してみてください。反射光の焦点が生じることが分かります。

鏡入り虫眼鏡 光とチューブ・インクルージョン

 話をキャッツアイに戻します。キャッツアイも反射光が集まるのですが、鏡入りの虫眼鏡とは、話が少し異なっています。鏡は平面ですが、チューブ・インクルージョンは円筒形であるため、その反射面は曲面です。右上のイラストを見てください。チューブ・インクルージョンの表面に垂直に当たった光は真っ直ぐ反射されますが、斜めに当たった光の向きは変わってしまいます。ステンレスパイプの側面に写った自分の顔を思い出してください。中央部は正しく写っていますが、ワキの部分では顔が曲がっています。同様のことが、キャッツアイの内部でも起こっているわけです。曲げられた反射光はバラバラに分散するため、線条の元になりません。キャッツアイの線条は、真っ直ぐな反射光が集まって誕生します。
 では、どの様にして反射光は集まるのでしょうか。まず、一本のチューブ・インクルージョンによる反射光のみに注目しましょう。左下の図を見てください。3つのキャッツアイの断面図のうち、縦方向からの断面図の向きを変えたものです。この場合、鏡入り虫眼鏡と同じように考えれば、反射光が集まることが理解できます。次に、異なるチューブ・インクルージョンによる反射を考えましょう。右下の図を見てください。分かり易くするために、入射光の方向を1つにしています。この場合も、反射光が集まることが分かります。いずれの場合も、反射光が集まるところは、結晶の外部です。図中の半円の半径が5ミリとすると、反射光が集まるところは結晶表面から3.5ミリ程度、離れたところになります。この反射光が集まるところは全ての縦方向の断面で発生します。そして、これらが横に並ぶことによって、線条が形成されます。線条が現れるところは結晶の表面から離れたところです。そのため、宝石を傾けると、予想以上に線条が移動します。これが猫目効果です。

反射光によって線条が生成される様子
猫目効果の原理 シャトヤンシーの原理

キャッツアイ (ジュエリー) ● キャッツアイ (裸石)


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