上のグラフは、ニッケルの濃度によって、鉄隕石の数を表したものです。8%辺りにピークがあり、ニッケルの濃度の範囲が広いことが分かります。ニッケルの濃度は、鉄隕石の構造を決める重要な要素となっており、鉄隕石は構造によって3種類に分類されています。次に、それぞれについて、簡単に紹介しましょう。
鉄隕石は鉄ニッケル合金を主成分としています。鉄ニッケル合金には、ニッケルの濃度によって、ニッケルの少ない成分(カマサイトという)とニッケルの多い成分(テーナイトという)が存在します。ニッケルの濃度が約6〜17%の場合、カマサイトとテーナイトが混在することが出来ます。カマサイトの方が酸に溶けやすいので、隕石の切断面を酸処理すると、ウィドマンシュテッテン構造が出現します。この様な鉄隕石は、カマサイトが正八面体方向に成長しているので、オクタヘドライトと呼ばれています。
もし、ニッケルの濃度が17%を越えていると、カマサイト(ニッケルの少ない成分)はわずかにしか存在することが出来ず、鉄隕石はテーナイト(ニッケルが多い成分)に埋め尽くされてしまいます。よって、カマサイトとテーナイトが混在している状態は無くなり、ウィドマンシュテッテン構造は現れません。このような鉄隕石はアタキサイトと呼ばれています。名の由来は「構造がない」という意味のギリシャ語です。このページで紹介しているチンガー隕石はアタキサイトです。
もし、ニッケルの濃度が6%より低いと、テーナイト(ニッケルが多い成分)は生じることが出来ず、鉄隕石はカマサイト(ニッケルが少ない成分)のみで構成されます。この様な鉄隕石は、正六面体の方向に割れやすい性質があるので、ヘキサヘドライトと呼ばれています。 |