チンガー隕石

アタキサイト(「B)
チンガー隕石
Chinga, Tanna, Tuva, Russia

1913年発見、価格(1グラム):¥210

 チンガー隕石は、1913年に、トゥーバ共和国を流れるチンガー川の流域で、発見されました。トゥーバ共和国はロシア連邦に属する共和国で、モンゴルと国境を接しています。現在までに、約250kgの隕石が回収されています。断面を酸処理しても、他の鉄隕石(ケープ・ヨーク隕石参照)のような縞模様(ウィドマンシュテッテン構造)を示しません(理由はコラム参照)。チンガー隕石はアタキサイトという種類に分類されています。

鉄隕石中のニッケル濃度
ニッケルの濃度による鉄隕石の数の分布図
 5%より少ないものは存在しない。35%を越えるもの(最高は60%)は数個しか存在しない。

コラム「鉄隕石の分類法:構造編」
 上のグラフは、ニッケルの濃度によって、鉄隕石の数を表したものです。8%辺りにピークがあり、ニッケルの濃度の範囲が広いことが分かります。ニッケルの濃度は、鉄隕石の構造を決める重要な要素となっており、鉄隕石は構造によって3種類に分類されています。次に、それぞれについて、簡単に紹介しましょう。
 鉄隕石は鉄ニッケル合金を主成分としています。鉄ニッケル合金には、ニッケルの濃度によって、ニッケルの少ない成分(カマサイトという)とニッケルの多い成分(テーナイトという)が存在します。ニッケルの濃度が約6〜17%の場合、カマサイトとテーナイトが混在することが出来ます。カマサイトの方が酸に溶けやすいので、隕石の切断面を酸処理すると、ウィドマンシュテッテン構造が出現します。この様な鉄隕石は、カマサイトが正八面体方向に成長しているので、オクタヘドライトと呼ばれています。
 もし、ニッケルの濃度が17%を越えていると、カマサイト(ニッケルの少ない成分)はわずかにしか存在することが出来ず、鉄隕石はテーナイト(ニッケルが多い成分)に埋め尽くされてしまいます。よって、カマサイトとテーナイトが混在している状態は無くなり、ウィドマンシュテッテン構造は現れません。このような鉄隕石はアタキサイトと呼ばれています。名の由来は「構造がない」という意味のギリシャ語です。このページで紹介しているチンガー隕石はアタキサイトです。
 もし、ニッケルの濃度が6%より低いと、テーナイト(ニッケルが多い成分)は生じることが出来ず、鉄隕石はカマサイト(ニッケルが少ない成分)のみで構成されます。この様な鉄隕石は、正六面体の方向に割れやすい性質があるので、ヘキサヘドライトと呼ばれています。

ほんもの隕石観察セット ●隕石標本 ● 隕石標本2  ● 隕石標本3


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