鉱物の比重(密度)

「比重と密度」
 密度とは、単位体積あたりの物質の重さ(注:正確には質量)のことです。通常、物質の体積が1cm3(立方センチメートル)の時の重さのグラム数が密度の値となり、単位は、g/cm3が使用されています。1cm3の重さが3グラムの鉱物ならば、その鉱物の密度は3g/cm3となります。
 比重も、密度と同様の意味で使われています。比重とは、文字通り、重さを比較した値で、同じ体積で比較します。比較の基準として水が使われています。水の密度は、1g/cm3です。よって、g/cm3の単位で表した密度の値が、そのまま、比重の値になります。比重には単位がありません。比重は密度同士を比較した値であると考えれば、納得できます。
 密度と比重の使い分けですが、専門書や学術論文では密度が使用されています。一般向けの鉱物図鑑などでは比重が使われています。鉱物の特性のひとつである硬度を表すのにモース硬度計が利用されていますが、モース硬度計には単位がありません。そのため、同じく単位がない比重の方が使われるのかもしれません。

「鉱物の比重」
 鉱物の種類を鑑定する際、比重も重要な情報となります。下表に、主な鉱物の比重を掲載しました。地表部にある主な岩石を構成している主要造岩鉱物(石英、長石、雲母、角閃石、輝石、カンラン石)の比重は3前後です。そのため、庭や川原に落ちている身近な石の密度は3程度のものが多くなっています。


石英(水晶)

長石

雲母

角閃石
2.7 2.6 2.8 3.3


輝石

カンラン石

磁鉄鉱

方鉛鉱
3.3 3.2 5.2 7.6


自然銀

自然金

石墨

ダイヤモンド
10.5 15.2 〜 19.3 2.2 3.6


トパーズ

ルビー

スピネル

ガーネット
3.5 4.0 3.6 3.7 〜 4.3

 鉱物の比重の大小は、含まれている元素の種類と鉱物の結晶構造によって決まっています。鉄を含む磁鉄鉱や鉛を含む方鉛鉱の比重は大きく、自然銀や自然金も大きい比重です。自然金は自然銀が含まれているため、金の重度によって、自然金の比重は変化します。石墨とダイヤモンドは炭素のみで構成されている鉱物ですが、結晶構造の違いによって、比重が異なっています。
 宝石を鑑定する時にも、比重は重要な情報となっています。トパーズと黄水晶(シトリン)は比重によって、区別できます。英国王室が間違えたルビーとスピネルも同様に鑑定が可能です。
 鉱物の比重は現在の地球の基本的な構造を決める原因にもなっています。地殻の8割以上が長石と石英で構成されています(参照:主要造岩鉱物とは)。マントルを構成するもっと主な岩石はカンラン岩(カンラン石と輝石からなる)です。構成鉱物の比重の差(地殻鉱物の比重<マントル鉱物の比重)が原因となって、地殻はマントルに浮かんでいます。日本列島の地下では、海洋プレート(海洋地殻)がマントルに沈む込んでいますが、その原因も比重の差です。沈み込んでいく海洋地殻はエクロジャイトと呼ばれる変成岩で構成されています。エクロジャイトには輝石とガーネットが含まれています。ガーネットの比重をカンラン石と輝石の比重と比べてください。ガーネットが大きくなっていることがわかります。つまり、ガーネットを含むエクロジャイト、つまり、海洋地殻は、マントルの中へ沈む込んでいくことになります。日本付近で発生する地震は、海洋地殻の沈み込みが原因となっていますが、その本質的な原因はカンラン石とガーネットの比重の大小関係にあるわけです。

「比重の求め方」
 鉱物の比重は、試料となる鉱物の重さと体積を測定すれば、計算で求めることができます。しかし、この方法では、重さを測定する器具(量り)と、体積を測定する器具(メスシリンダーなど)が必要です。重さと体積の両方を正確に測定しなければなりません。使用する計器の数を増えれば、測定器の不正確さの影響も増えます。そこで、一工夫して、重さのみを測定することによって比重を求める方法で、比重の測定は行われています。

鉱物の比重A 鉱物の比重B
空中での重さ 水中での重さ
Aグラム Bグラム

 まず、鉱物に糸を付けて空気中につるしながら重さを量ります(重さはAグラムだったとします)。鉱物の体積をVとすれば、鉱物の比重Dは、次の式で表されます。

    D=A/V ・・・(1)

次に、鉱物を水の中へ移し、再び、重さを量ります(重さはBグラムだったとします)。物体を水に入れると、物体の体積と同じ体積の水の重さが、浮力として、物体に働きます(アルキメデスの原理)。この原理と水の比重が1であることより、水による浮力(A-B)には、次のような式が成り立ちます。

    A-B=V ・・・(2)

式(2)から式(1)のVを消すと、

    D=A/(A−B)

となります。この式を使えば、重さを量るだけで、比重を求めることが出来ます。
 以上の様な方法で、比重を求める簡易比重測定器が市販されており、鉱物や宝石の鑑定に利用されています。この測定器では、糸でつるすのではなく、網に試料を乗せて測定します。水に沈めることが出来る鉱物の場合、この方法で比重を求めることが出来ます。では、水に沈めることが出来ない場合にはどうすればよいのでしょうか。この場合、鉱物を構成している元素の種類とその構成比、そして、鉱物の結晶構造を基に、計算によって比重は求められています。

比重測定キット


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