鉱物の硬度

「硬度と硬度計」
 硬度とは物質の硬さの程度を表す尺度です。物質の硬さは別の物質と、こすりつけることによって、調べます。ダイヤモンドは最も硬い物質です。全ての物質にキズをつけることができます。硬さと強さは同じものと思われがちですが、全く異なったものなので注意してください。例えば、ダイヤモンドはハンマーでたたくと割れてしまいます。(よい子の皆さんへ:ママの指輪などで試してはいけません。怒られますよ。)硬いとは、ひっかいた相手にキズをつけるという意味であって、衝撃に対して強いという意味ではありません。割れにくさは靱性(じんせい)という別の指標で評価されています。
 鉱物の硬度は、鉱物の種類を鑑定する際、重要な情報として利用されています。鉱物の硬度を表す方法として、最も一般的なのがモース硬度計です。鉱物同士をこすりつけて、硬度の大小を決めています。キズがついた方が硬度が小さい鉱物です。キズをつけた方が硬度の大きい鉱物です。下表の10種類の鉱物が硬度の基準として、モース硬度は決められています。モース硬度計の数値は、硬さのランクを表す数字です。トパーズの硬度は8であり、蛍石の硬度は4ですが、トパーズは蛍石の2倍の硬度であるという意味ではありません。間違わないようにしてください。
 では、鉱物の硬度を比較するには、どうしたらよいのでしょう。ここでは、ビッカース硬度計(下表参照)を紹介しましょう。ビッカース硬度計は、ダイヤモンドの針を用いて、鉱物の表面を一定の力で押さえた時に出来るミゾの大きさから定められた硬度計です。よって、硬度の違いはミゾの大きさの違いとして計ることが出来ます。ビッカース硬度計によると、トパーズは蛍石の約8倍の硬度を持っていることが分かります。

モース硬度計とビッカース硬度計
モース硬度計 鉱物 ビッカース硬度計
1   滑石 47
2   石膏(注) 60
3   方解石 136
4   蛍石 200
5   リン灰石 659
6   正長石 714
7   石英水晶 1103
8   トパーズ 1648
9   コランダム 2085
10   ダイヤモンド -
(注)モースのオリジナルでは岩塩

「モース硬度の利用法」
 モース硬度計では、鉱物同士をこすりつけて、硬度の大小を決めます。キズがついた方が硬度が小さい鉱物です。キズをつけた方が硬度の大きい鉱物です。例を出して、モースの硬度計の利用法を紹介しましょう。
 いま、未知の鉱物があったとします。その鉱物は、方解石にキズをつけることが出来きたが、蛍石にキズをつけることが出来きませんでした。未知の鉱物の硬度は3と4の中間という意味で、3 1/2(過分数です。3過2分の1と読みます。)、あるいは、3.5と表します。先ほども注意しましたが、モース硬度計の数字は硬度のランクを表しています。硬度3.5とは、硬度が3と4の間であるという意味であって、3と4のど真ん中という意味ではありません。下表に主な鉱物のモース硬度と、鉱物鑑定に有用な道具の硬度をまとめました。

硬度 主な鉱物 道具
1  滑石
1.5  石墨、鶏冠石
2  石膏、岩塩、輝安鉱
2.5  雲母、自然金、自然銀、自然銅、方鉛鉱  ツメ
3  方解石
3.5  孔雀石、重晶石  ¥10硬貨
4  蛍石
4.5  自然白金
5  リン灰石
5.5  赤鉄鉱、磁鉄鉱、トルコ石、角閃石、輝石  ナイフ、釘
6  正長石、ムーンストーン、ラブラドライト
6.5  ルチル、錫石
7  石英(水晶)、トルマリン、ヒスイ、カンラン石
7.5  ベリル(エメラルド、アクアマリン)、ガーネット
8  トパーズ
8.5  アレキサンドライト
9  コランダム(ルビー、サファイア)
10  ダイヤモンド

コラム「硬度と宝石」
 宝石になる鉱物には、希少性の他に、美しさと美しさを保つための硬度を持っていなければなりません。宝石として利用されている鉱物の硬度が高いのは、そのためです。身のまわりに普通に存在している砂の主成分は、角閃石と長石と石英です(参照:主要造岩鉱物とは)。この3つの鉱物のなかで、最も硬いのは石英です。石英よりも硬い(モース硬度計で7より大きい)鉱物を宝石として用いれば、砂ぼこりによるキズがつかないことになります。モース硬度計で7よりも小さい鉱物(ムーンストーンやトルコ石など)は、砂ぼこりを取り除く時に、注意が必要です。ふき取るのではなく、吹き飛ばすようにします。

モース硬度計


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