炭素の同素体には有益で将来性のある物質が複数知られています。石墨とダイヤモンド以外の同素体を紹介しましょう。
まず、結晶構造を持たない同素体が存在し、無定形炭素と呼ばれています。ススや木炭の他、臭いを取る活性炭も無定形炭素です。ゴルフのクラブやテニスのラケットなどのスポーツ用品や、航空機や船舶の本体で使用されている炭素繊維(カーボン繊維)も、無定形炭素です。
60個の炭素原子がサッカーボールのような球形構造をなしているものが、フラーレンです。1985年、英国のクロートと、米国のスモーリーとカールは、石墨にレーザー光をあてることによって、フラーレンを発見しました。1996年、彼等にはノーベル化学賞が授与されました。
6個の炭素原子からなる6角形が網の目状に並び、円筒状の構造をなしているものが、カーボンナノチューブです。1991年、日本の飯島は、炭素棒に放電する方法でフラーレンの合成を研究しているときに、カーボンナノチューブを発見しました。放電による方法ではプラス極に大量のフラーレンが生成するため、ほとんどの研究者はプラス極にのみ注目していました。飯島はマイナス極で生成したものに注目し、フラーレンとは異なるもの、つまり、カーボンナノチューブを発見しました。ここ数年、カーボンナノチューブの研究はノーベル化学賞の候補に挙がっています。今年こそは・・・。 |