このページの標本は573℃から870℃の間(ただし、圧力は1気圧)で安定な高温型水晶の外形をした水晶です。イラストを参考にして標本の結晶の形を観察すると、このページの水晶には側面が無く、6つの三角形の面を持った三角錐をふたつ結合した形(そろばんの珠のような形)、つまり、高温型水晶の外形をしていることが分かります。また、別のページの水晶には側面が存在しており、573℃よりも低温で安定に存在する低温型水晶の外形をしています。低温型水晶は母岩の表面で結晶が成長する場合が多いので、一端のみ鋭く成長した結晶が多いのですが、高温型水晶はマグマ中で形成する場合が多いので、両端が尖った本来の結晶形に成長します。高温型水晶と低温型水晶は化学組成は同じですが、結晶構造が異なっています。この様な関係を多形といい、ダイヤモンドと石墨も多形の関係にあります。
ところで、ここで紹介した水晶は高温型水晶の外形をしているですが、室温では結晶構造は低温型水晶と同じです。573℃まで加熱してやると、瞬時に高温型水晶へと変化します。また、低温型水晶を573℃まで加熱してやると、外形は低温型のままで、瞬時に結晶構造が高温型に変化します。このように、水晶の外形は結晶が誕生したときの温度によって決まりますが、結晶構造は温度によって変化します。 |