雲母

 雲母(うんも)はカリウムを主成分として含む珪酸塩鉱物のグループです。光沢が強いので、国内では『きらら』と呼ばれていました。英語名のマイカ(mica)もラテン語micare(輝くの意)に因んでいます。雲母には薄くはがれやすい性質があり、『千枚はがし』とも呼ばれています。雲母の結晶構造はサンドイッチのような層状になっています。層と層をつなぐ力が弱いのが、はがれやすい原因です。

白雲母

化学式:KAl2(AlSi3O10)(OH,F)2

スターマイカ
白雲母(スターマイカ)
Dirino das Lacan-jeiras, Minas Gerais, Brazil

クロム白雲母

マンガン白雲母

クロム白雲母

マンガン白雲母

Minas Gerais, Brazil

Paige, Nuristan, Afghanistan

 白雲母は透明で、熱を伝えにくく、電気も流しにくいので、ストーブの窓やアイロンの内部に使用されています。その他、絹雲母と呼ばれる非常に細粒な白雲母が、塗料や化粧品に利用されています。白雲母の英語名はモスコバイト(Muscovite)です。かつて、ウラル産の白雲母がモスクワ経由でヨーロッパに入ってきたのが名前の由来です。上の標本は星形をしているので、スターマイカと呼ばれています。メルヘンチックで人気の標本です。
 白雲母の色は必ず白いわけではありません。左下の標本はクロムの酸化物(Cr2O3)の混入で緑色になった白雲母で、クロム白雲母と呼ばれています。アベンチュリン(緑色の石英)の結晶内にはクロム白雲母の微結晶が含まれており、着色の原因となっています。右下の標本はマンガンを含むことによってピンク色を呈している白雲母で、マンガン白雲母と呼ばれています。

黒雲母

化学式:K(Fe,Mg)3(AlSi3O10)(OH,F)2

黒雲母
Governador Valadares, Minas Gerais, Brazil

 墓石などに使用されている花崗岩を観察すると、3種類(透明、白、黒)の鉱物で構成されていることが分かります。そのうち、黒い鉱物が黒雲母です(ちなみに、透明な鉱物は石英、白い鉱物は長石です)。黒雲母の用途はあまりなく、この標本もブラジルの水晶鉱山に捨てられていたものです。

金雲母

化学式:K(Mg,Fe)3(AlSi3O10)(OH,F)2

金雲母
Tapira, Minas Gerais, Brazil

 化学式を見てもらえば分かるように、金雲母に金(Au)は含まれていません。化学式は黒雲母のものと、ほとんど同じです。ちがいは、金雲母にはマグネシウムが多く含まれており、黒雲母には鉄が多く含まれていることです。

リチア雲母

化学式:K(Li,Al)3(AlSi3O10)(OH,F)2

リチア雲母

リチア雲母(球形)

Barra de Salina,Coronel Murta,
Minas Gerais, Brazil

Taquaral, Minas Gerais, Brazil

 リチア雲母はリチウムを主成分とする雲母です。リチウムの鉱石として利用されています。左の標本のような板状の結晶は希です。魚の鱗(うろこ)の塊のような形状で産出するので、鱗雲母(りんうんも)とも呼ばれています。右の標本を観ると、確かに、鱗に似ています。右の標本が球状になっているのは、化学組成の変化による結晶構造の歪みが原因と言われています。

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