ザグ隕石は、1998年8月4日から5日にかけて、モロッコのザグの近くの山に落下した。約175Kgの隕石が地元の人々によって回収された。普通コンドライトと呼ばれるグループに分類される隕石である。
左側の写真はザグ隕石の断面であるが、角張った明るい部分が暗い部分の中に取り込まれている角れき化した構造が観察できる。この2つの部分には構造にも相違がある。暗い部分は始源的な部分で、明確にコンドリュールの存在が確認することができる。一方、明るい部分は熱による変成を受けた部分で、コンドリュールの輪郭がはっきりしない。
右側の写真はザグ隕石に含まれている岩塩(NaCl)の写真である。青い色をしているのは放射線の影響である。岩塩が発見された隕石は、モナハン隕石に次いで、ザグ隕石が二例目である。この2つの隕石中の岩塩には、液体の水が包有物として含まれていた(ザグ隕石中の岩塩に含まれていた液体の水の包有物の拡大写真)。ザグ隕石の岩塩が形成した年代を求めたところ、太陽系の誕生(約45億7000万年前)から、わずか200万年後であることが判明した。つまり、太陽系には誕生後わずか200万年で液体の水が存在していたことになる。水は岩石の変成やマグマの生成に重要な働きをするので、形成初期の太陽系の進化に重要な影響を与える。また、生命には水は不可欠である。この水の発見は生命が誕生は太陽系の誕生直後でも可能であることを示している。このように、ザグ隕石は最も注目されている隕石のひとつである。 |