アエンデ隕石

CVコンドライト

溶融表皮が着いたアエンデ隕石

アエンデ隕石中のCAI

Allende, Chihuahua, Mexico

1969年落下、価格(1グラム):¥1,000

 アエンデ隕石は、最もよく研究されている隕石です。1969年2月8日の午前1時頃、メキシコのチワワ州にあるアエンデ村に、数千個の破片に分裂して落下しました。この様な落下形式を隕石シャワーといいます。落下地点は50x12 Kmという範囲に広がっています(下方にある地図参照)。アエンデ隕石は2トン以上の破片が回収されていますが、回収量は落下した量の半分程度です。現在も、アエンデ村の多くの民家で、隕石が飾られています。
 アエンデ隕石の内部には、小さな球体(コンドリュールという)が多数含まれています(解説参照)。球体以外の部分は微細な鉱物で構成されており、マトリックスといいます。コンドリュールは地球の岩石には見られず、多くの石質隕石で観察される特徴です。また、コンドリュールを含んだ隕石はコンドライトと呼ばれています。
 左側の写真で隕石の上部を見ると、黒色の薄い層が着いていることが分かります。この黒い層は溶融表皮フュージョン・クラスト)と呼ばれ、隕石の表面でよく観察される特徴のひとつです。落下中の隕石の表面は、大気との摩擦熱で加熱されます。その熱によって、溶融表皮は形成されました。
 右の写真を見ると、隕石内部に白色包有物が見えます。この部分にはカルシウムとアルミニウムが多く含まれており、CAI(解説参照)と呼ばれています。
 アエンデ隕石は気体に成りやすい物質(炭素や水やイオウなど)が多く含んだおり、炭素質コンドライトと呼ばれています。気体に成りやすい物質は熱によって隕石から失われますが、炭素質コンドライトには多く残っています。この特徴は、炭素質隕石は熱による変質が無く(少なく)、形成された時(約45.5億年前。太陽系が誕生した時)の状態を保持していることを示しています。炭素質コンドライトは太陽系の原料物質を知る重要な情報源と考えられています。

解説「コンドリュール」
 コンドリュールは球状の組織(大きさは0.5〜2mm程度)で、主な構成鉱物はカンラン石輝石です。コンドリュールの形(球形)は、水滴のように表面張力が働いて形成されたことを示しており、コンドリュールは溶けていたことになります。コンドリュールは隕石の内部で形成されたのではなく、原始太陽系星雲(誕生直後の太陽系に存在した星雲)の内部で形成されたと、考えられています。コンドリュールを加熱するメカニズムは解明されておらず、様々な説(衝突説、摩擦説、放電説、化学エネルギー説等)が提唱されています。

解説「CAI」
 アエンデ隕石に存在している不定形の白色包有物はカルシウムとアルミニウムが多く含まれているので、CAI(Ca-Al-rich inclusionsの略)と呼ばれています。CAIを構成している主な鉱物は、スピネル、ペロフスカイト、アノーサイトなどの高温鉱物です。これらは原始太陽系星雲の中で最初に形成した鉱物であると考えられています。実際、アエンデ隕石のCAIからは、知られている太陽系物質の中では最も古い年代(約45.66億年)が得られており、CAIには太陽系形成時の最も古い時期の情報が含まれています。ゆえに、アエンデ隕石は太陽系創世記のロゼッタ・ストーンと呼ばれています。
 余談ですが、学会などで学生さんがCIAと呼んでしまい、時々、笑いを誘います。

コラム「チワワは隕石を呼ぶ!?」
 アエンデ村近辺には、アエンデ隕石以外にも、巨大な隕石が落下しています。隕石の落下地点を下図に示しました。緑色の領域がアエンデ隕石が落下した地域です。赤い星が別の隕石の落下地点です。モリト隕石は重さが10.1トンの鉄隕石で、1600年頃に発見されました。アダルガス隕石も同じ頃に発見された鉄隕石で、3.4トンの重さです。チュパデロス隕石は14トンと6.7トンの鉄隕石で、1852年に見つかっています。この3つの隕石は名前が異なっていますが、同じ隕石が落下の途中に分裂したものです。アエンデ村近辺には巨大な隕石が2回も落下したことになります。この様な地域は世界的にも希です。アエンデ村のあるチワワ州は、犬のチワワの原産地です。隕石もチワワの目に引きつけられたのかもしれません(笑)。
 小さい隕石では、もっと、狭い地域に落下したものも知られています。米国コネチカット州にあるウェザーズフィールドという小さい町で起こった珍事です。1971年4月8日の午前4時30分頃、350グラムのコンドライトが落下し、家の屋根を直撃しました。その11年後の、1982年11月8日午後9時14分頃、2756グラムのコンドライトが落下し、またしても、民家の屋根を直撃しました。隕石の被害を受けた家の距離は、3.2 Kmも、離れていませんでした。

アエンデ隕石の落下分布とアエンデ村近郊に存在する別の隕石

ほんもの隕石観察セット ●隕石標本 ● 隕石標本2  ● 隕石標本3


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