無側面低温型水晶

無側面低温型水晶 高温型水晶〔イラスト〕 低温型水晶〔イラスト〕
Second Soviet mine, Dal'negorsk,
Primorskyi, Russia
高温型水晶 低温型水晶

 右上のイラストのように、水晶は外形によって2つのタイプに分類されます。高温型水晶は、二酸化ケイ素に富んだ(Si02:70%程度)マグマ(650〜1300℃)の中で形成された水晶に、多く見られる形態です。お馴染みの低温型水晶が形成される環境(ペグマタイトや熱水中など)の温度は、それよりも低温です。ここで紹介する標本には側面が見受けられないので、外見からは高温型水晶になります。しかしながら、他の高温型水晶とは異なり、この標本は温度が低い環境で形成された水晶です。よって、高温型低温水晶と呼ばれています。淡い緑色を呈していのはヘデンベレグ輝石(CaFeSi2O6)が混入しているためです。
 次に、低温環境(マグマ中よりは低いという意味)で、外形が高温型水晶の水晶(側面がない水晶)が誕生した理由を紹介しましょう。低温型水晶には、長柱状のもの(例えば、レーザー水晶)と、短柱状のもの(代表例はハーキマー・ダイヤモンド)が存在します。ハーキマー・ダイヤモンドは低温の熱水(熱水の中では温度が低いという意味)から生成しましたが、長柱状の水晶は比較的高温のペグマタイト中で形成されました。つまり、温度によって水晶の長さが決まるというわけです。また、不純物の存在も水晶の成長に影響します。例えば、紫水晶に短柱状のものが多いのは、不純物として鉄が含まれていることが原因のひとつと考えられています。ハーキマー・ダイヤモンドの生成温度よりも低い温度で、不純物(ヘデンベレグ輝石)を取り込みながら生成するという希な状況で、高温型低温水晶は形成されたと思われます。

コラム「命名に疑問」
 高温型水晶(このページで紹介したものではないので注意。二酸化ケイ素に富んだ火成岩に含まれていた水晶。高温型水晶を参照。)に側面が存在しないのは、結晶の生成温度が高いためであると、長期間、考えられてきました。しかし、水晶の合成実験で、この考えが間違えであることが判明しました。二酸化ケイ素に富んだ熱水(低温型水晶を生成する)を、高温型水晶が形成される温度まで加熱して水晶を合成したところ、形成された水晶には側面が存在していました。つまり、高温下でも低温型の外見をした水晶が形成されたのです。このことより、高温型水晶の形成には、二酸化ケイ素に富んだマグマの中という環境状態(水・二酸化ケイ素以外の成分の存在など)が必要なようです。

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