この巨大な煙水晶は、ベルホリゾンテ市(ブラジル・ミナスジェライス州の州都)にある鉱物博物館の玄関前に展示されています。写真の人物は筆者(身長は180
cm)です。水晶の大きさが良く分かります。重量は4 トン以上です。館長さんの話によると、これよりも巨大な水晶が数多く見つかっているが、輸送費がかかるので、入れ替えは行わないそうです。ちなみに、世界最大の水晶の単結晶の重さは約40
トン(コラム参照)。この水晶の約10倍の重さです。
この様な巨大な結晶が形成される原理を簡単に説明しましょう。マグマが地下深くで固まるときは、固まりやすい成分から、ゆっくりと固まっていきます。その時、固まりにくい成分は、マグマに濃縮されていきます。固まりにくい成分とは、炭酸ガスや水などの気体に成りやすい物質と、量が少なすぎて結晶を造るのが困難な元素と、そして、固まった部分を構成する鉱物の結晶に入れない元素です。マグマが固まる最後の段階になると、炭酸ガスや水はマグマにとけ込めなくなる程度に濃縮するようになり、マグマから気体として放出されて、空洞が形成されます。気体中での元素の移動は、マグマ中に比べて、はるかに容易です。そのため、広範囲から大量の元素が集まって来ることが可能になり、空洞内に大きな鉱物の結晶が形成されます。この様な鉱物の産状をペグマタイトといいます。マグマの量が十分に多ければ、巨大な結晶が誕生します。
ペグマタイトでは、空洞のおかげで、結晶は自由に(本来の形で)成長することができます。そのため、形態の整った美しい鉱物結晶が誕生します。また、存在量が少なくて結晶を形成するのが困難な元素が、ペグマタイトには濃縮しています。よって、珍しい鉱物が形成されています。この様な仕組みで、ペグマタイトでは、水晶の他に、アクアマリン、トパーズ、トルマリンの大型の結晶が産出し、ペグマタイトは鉱物の宝の山となっています。 |