Dar al Gani 476(火星隕石)

レルゾライト質シャーゴッタイト

火星大気とシャーゴッタイトに含まれる気体組成の比較

Dar al Gani 476(火星隕石)

火星大気とシャーゴッタイトに含まれる気体組成の比較
Hammadah al Hamra, Libya ●の大きさはヴァイキングの
測定精度に対応している。

1998年発見、価格(1グラム):¥40000

 Dar al Gani 476(DAG476)は、1998年5月にリビアの砂漠で発見されました。重さは2015グラムでした。火星から飛来したと考えられている隕石グループ(SNC隕石ザガミ隕石を参照)の一種、シャーゴッタイトに分類されています。カンラン石クロム鉄鉱(Cr2FeO4)を微細な輝石や斜長石などが取り囲んでおり、この構造はマグマの中で生成した結晶が集積して形成した岩石(集積岩)であることを示しています。このようなシャ−ゴッタイトはレルゾライト質シャーゴッタイトと呼ばれていますが、適切な呼び名ではありません。なぜなら、地球のマントルを構成する主要な岩石であるレルゾライト(カンラン石と輝石で構成されるカンラン岩の一種)に類似性があると、誤解を生むからです。構造からはハンレイ岩質と呼ぶべきです。

コラム「火星起源の根拠」
 SNC隕石が火星起源であると考えられている根拠を紹介しましょう。
 隕石が形成された年代を求めると、大部分の隕石が45〜46億年という年代を示します。しかし、SNC隕石の場合、1.8〜13億年という年代を示します。このような若い年代は、太陽系形成後も火成活動が長期間(30億年間以上)継続していた天体で、SNC隕石が形成されたことを意味しています。その様な天体は小惑星では考えられず、惑星サイズの天体(火星?)であると考えられました。
 より、強い根拠として、SNC隕石のガラス(マスケナイト:ショックで変成した斜長石)部分に含まれている気体を分析したところ、ヴァイキング探査機による火星大気の分析結果によく一致する(上のグラフ参照)ことがあげられます。二酸化炭素、窒素、希ガス(Ne: ネオン、Ar: アルゴン、Kr: クリプトン、Xe: クセノン)の存在比の他、アルゴン40とアルゴン36の存在比もよく一致しています。アルゴン40はカリウム40から生成したものであり、アルゴン40とアルゴン36の存在比は大きく変化します(例えば、火星大気では2000、地球大気では296、金星大気では1であり、隕石の中には0.01という分析結果も報告されています)。にもかかわらず、SNC隕石の分析値は火星大気とよく一致しています。さらに、グラフに載っていない分析値(窒素15と窒素14の存在比、クセノン129とクセノン132の存在比)も、よく一致しています。この事実は、SNC隕石が火星起源であることを強く示唆しています。
 その他の根拠として、この隕石のように鉱物の結晶が集積するには月以上の重力が必要であることがあげられます。隕石の化学組成の分析から、ザクロ石が溶けることによって生成するマグマが存在する天体(惑星サイズの天体)である必要性も、指摘されています。
 以上のような根拠より、SNC隕石は火星起源であると考えられています。
 ところで、SNC隕石はどのようにして火星から放出されたのでしょうか。その答えはマスケナイト(ショックで変成した斜長石)の存在から推測することが出来ます。マスケナイトの存在は、隕石が強い衝撃を受けたことを意味しており、その衝撃は別の隕石が火星に衝突した時に発生したと説明することが可能です。その衝突時に、火星の一部がはじき飛ばされて引力圏を離れたと、考えられるわけです。

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