North West Africa 032(月隕石)

月隕石 (月の海の石)
North West Africa 032(月隕石)
Kem Kem plateau, Morocco

1999年発見、価格(1グラム):¥600,000

写真提供&購入先:RA Langheinrich Meteorites & Fossils

 この隕石は1999年10月にモロッコの砂漠で発見されました。風化が少ない良質な隕石で、回収量は約300gでした。アポロ12号と15号が回収してきた月の海の石によく似ており、月の海から飛来した隕石と考えられています。月には白い部分と黒い部分が存在しますが、月の海とは黒い部分で、平坦な地形です。月の海の総面積は月面全体の約17%しかなく、月の海の隕石は月隕石の中でも貴重なものです。
 この隕石にはカンラン石輝石チタン鉄鉱の結晶が含まれており、結晶の隙間を輝石と長石の微結晶が埋めています。脈のような模様は、熱によって隕石の一部が溶けることによって、生じました。また、長石は、火星隕石に観られるように(ザガミ隕石参照)、高圧で生じる成分に変化しています。これらの痕跡より、この隕石は強い衝撃を受けたことが分かります。その衝撃は、別の隕石が月の海に衝突したときに発生したとすると、この隕石の素性が上手く説明できます。月の海の岩石の一部が衝突によって宇宙空間に放出され、後に地球に落下してきたものが、この隕石であると推測できます。月面のクレーターは隕石の衝突によって形成されたものであり、衝突の様子が観測されたこともあります(コラム参照)。
 月の海の石の約90%が玄武岩です。月の海の玄武岩には、地球の玄武岩に比べて、ナトリウムやアルミニウム、水など蒸発しやすい成分が少なく、クロムやチタンが多く含まれています。チタンの含有量の変化は大きく、月の海の玄武岩はチタンの量によって、下の表のように3つに分類されています(この隕石はlow-Tiに属します)。玄武岩のマグマが生成した深度と年代は、月の海の形成を考えるのに重要な情報となっています。

月の海の玄武岩の分類
分類名 high-Ti low-Ti VLT(very low Ti)
TiO2 8〜14% 1.5〜5% 1%以下
年代 40〜35億年 35〜31億年
マグマの深さ 200Km 250Km 400Km

コラム「月と隕石の衝突」
 隕石が衝突した直後の月の様子を描写したと思われる古文書が、イギリスのカンタベリーの住民によって作成されています。それによると、1178年6月28日、東の空に見えていた月の弧が、たいまつのような炎で二分され、炎の発生は12回を越えたそうです。その時、ジョルダーノ・ブルーノと呼ばれているクレーターが誕生したと、考えられています。このクレーターの直径は約20Kmで、月の裏側に存在します。クレーターの誕生時に噴出した物質が、明確に放射状に残っており、若いクレーターであることを分かります。
 衝突の瞬間が写真に撮られたこともあります。50年前、光り輝く円が月面に出現した写真が撮影されました。隕石が月に衝突して爆発した瞬間を写したものだという撮影者の主張は、長らく無視されていましたが、今年の2月、NASAによって認められました。

コラム「太陽風と月の石」
 太陽風とは太陽から高速(秒速400Km)で惑星空間に吹き出している流れである。太陽の周りにはコロナと呼ばれる領域のガス圧が、太陽の引力を越えているために、太陽風は発生する。太陽風の主成分は水素の原子核(原子から電子を取り去ったもの)であるが、5%ほどヘリウムの原子核が含まれている。月には大気と地磁気がないので、月面は太陽風にさらされている。そのために、月の石には太陽風起源のヘリウムがたたき込まれることになる。実際、分析されている月の石の全てに太陽風起源のヘリウムは含まれていた。また、月隕石の月起源のひとつの証拠である。ところで、うち込まれるヘリウムが到達できる深さは極めて浅い(0.00005mm以下)。それでも、太陽風起源のヘリウムが分析されている月の石の全てに含まれている。これは、月の石の大部分は一度は月面に存在したことがあるぐらい、激しい衝突が月面であったためだと解釈されている。左側の標本は月から飛来した隕石であるが、衝突時の破壊で形成した破片が固まった岩石(角れき岩)の構造をしている。

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